心から実現したかった「世界一周」は必要ないとバンコクに行って気付いた

大学三年生の夏頃に多くの人々が体験するであろう衝動に強く駆られた。

「世界一周したい」

思ってしまえば衝動は抑えきれず、情報を調べ始めた。

当時はハワイしか海外に行った経験がなかったため、

非常に不安であった。

しかし、調べていく内にバンコクは通称「バックパッカーの聖地」と言われており、

中には日本人が経営するドミトリーもいくつかあるという。

 

ここなら豆腐メンタルかつ拙い英語力の自分でもなんとかやっていけるのではないか。

手始めにバンコクでバックパックを経験し、レベルをあげよう。

バンコクの旅が無事に終わったら、本格的に世界一周を始めよう。

そう考えたと同時に一人分の航空券を予約した。

 

 

決断した二週間後にバンコクへ向けて出国

バンコクはビザは必要なかったため、やることは航空券を買うことくらいだった。

2週間の滞在だったが、遠足に行く程度のリュックサックに衣類を詰め、

必要なものは現地で適宜調達しよう。

そんな緩い考えで旅の準備を終えた。

 

羽田空港を出発し、スワンナプーム国際空港に到着し、

10年ぶりの海外に心が躍った。

飛行機を降りた瞬間から無駄に写真を取りまくり、

1人はしゃいでいた。

 

カオサン通りという所がバックパッカーが集うと聞いていたため、

タクシーを探し「カオサン」と行き先を告げた。

初めてのタイ人との会話だった。

良く言えば陽気な明るいおじさんで、声が大きくて驚いた。

腹式呼吸が習慣になっているからか耳が遠いからなのか理由はわからなかったが、

なぜか印象に強く残っている。

 

30分ほどでカオサン通りに到着し、

降りた時には街の異臭に驚いた。パクチーのような香りが漂っており、

日本との衛生環境の違いが新鮮だった。

 

あとから知ったことだが、タクシーの運転手には通常の3倍近い値段を請求されており、

それでも日本と変わらないもしくはリーズナブルだったため、支払っていた。

この体験から海外でタクシーに乗る際は事前に相場を確認するクセを身につけることができた。

 

バックパッカーの聖地で出会ったユニークな人々と素晴らしい体験の数々

カオサン通りに到着して、インターネットカフェに入り、

日本人宿を探した。

現地での情報収集がしたかったからだ。

 

「サクラ」という宿を見つけ、移動することに。

クーラーが完備してあるドミトリーで12人部屋だった。

部屋の雰囲気は明るくもなく、暗くもなく、フランクなちょうど良い雰囲気だった。

 

世界一周中という人が12人中8人で、驚いた。

そのうちの1人が周辺の街を案内してくれ、昼食を一緒にとった。

焼き飯とコーラを注文し、酸味の効いた辛いスープをシェアして食べた。

 

いろいろな場所に基本的に1人で行き、

ナナプラザだけは、バックパッカー達と一緒に行った。

 

水上マーケットや寺院・象乗り体験など日本ではなかなか体験できないことが多く、

新鮮だった。

 

帰国する頃に気付いた「本当に欲しかったもの」

あっという間に時間が流れ帰国することとなった。

いや、本当は旅の後半から早く日本に帰りたいと思っていた。

 

それはお金を使わないバックパック生活で、

選択する食事の制限や湯の出ない水シャワーに辟易していたからかもしれない。

あるいは、世界一周を目指す人達が、どこか現実から目を背け逃げているように見えてしまったからかもしれない。

 

考えるうちに自分が欲しかったものは、「世界一周」ではなく、

「自分が本当にやりたいことを見つける」ことや

「面白いことをやっていると周囲から思われる」ことだったということに気がついた。

 

世界一周それ自体ではなく、その先にあるものを自分が求めているため、

違った方法で実現することを考えよう・行動しようと決めた。

 

バンコクへ行ったことで、いかに恵まれた環境で生活することができているかということが身にしみたため、感謝の気持ちが強く醸成されたことが最も大きな得た財産かもしれない。